ラムとジョーカー
飲み助というほどでもないがバーという空間が好きで、通いたいと思うものの甘いカクテルが苦手。
ウイスキーやワインはふだん家でも飲むし、どうするかと思ったときに私なりの解としたのがラム酒である。
そこまで気にも留めないお酒だったため種類もあまり知らず、バーで飲むものに迷ったときに、美味しいのがありますよとバーテンダーにおすすめされたのがPyratというカリブ海ガイアナ共和国のラム酒だった。
オレンジの香りと甘すぎないなめらかな味わい、Pirateの古表記を冠した名前、海賊のバンダナのようなオレンジのリボンをまとったボトル。
このお酒の全てに惚れてしまった。
以来、よく行く近所のバーでは必ずこれのロックを注文する。
このオレンジの香りが邪道だという人もいるが、こんな暑い夏には大変良く合うさわやかなラムで、暗めのカウンターバーでソウルミュージックなど聴きながら一人ちびちび飲むには最高の友人となる。
六本木のバーを事務所がわりに闇社会で暗躍する男を描いた『ザ・ジョーカー』という大沢在昌の小説がある。
私はこれが大のお気に入りで、100万円の着手金で殺し以外はなんでも請け負う、冷淡そうでしかしとても人間臭い主人公ジョーカーを淡々と書き表している。
ジョーカーシリーズは毎話痺れるほど格好良く、渋くエキサイティングな展開を作り上げる大沢在昌に私は恋をしている。
こんなバーにもジョーカーは来ないだろうかと、私はこの小説を読みながらPyratをなめ、黒く塗られた木製のカウンターで、静かに夢を見るのだ。
そんなちょっとした、私なりのハードボイルド。
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レッツ ハードボイルド☆